惑星パライソの世界
惑星気候と生態系
 惑星パライソは「雲海」と呼ばれる幾十層もの高密度の大気に覆われている、ガス惑星である。
 雲海の底は高圧の大気と海が広がっており、更に核となるマントル層に到達する。惑星パライソは太陽を持たない、孤立した惑星である。しかし雲海中に含まれる発光成分と自転による対流効果によって昼と夜のような状態が発生する。大気は概ね人類が生存可能な成分からなっており、もし固い大地まで用意されていれば入植に適した惑星であったことは間違いない。自転によって循環する雲海の濃度によって擬似的な四季のようなものが存在し、365日周期で一巡する。この露骨に奇妙な環境は、明らかにこの惑星環境が人工のものであることを示しているが、いつの時代にそうなったかはよくわかっていない。
 雲海は雲藻と呼ばれる微小有機生命体が大量に含まれており、これが惑星パライソの環境に大きな影響を与えている。雲藻は主に惑星パライソの生物のエサとなる他、生物の精神感応に反応し様々な物理現象を発生させる。惑星パライソの冥宮内部はその影響を大きく受けている。
 冥宮内部とその周辺は需要と供給が一致することによる複雑で濃密な生態環境が出来上がっており、一面が雲に覆われた惑星とは思えぬほどの多種多様な生物が棲息し、この奇妙な冥宮の生態系サイクルを構成している。冥宮内の生物を狩ることもまた、冥宮探索の目的のひとつである。その狩りで得られる戦利品は、探索者に生活の糧を与えることになる。そして未熟な者は逆に冥宮の住人に狩られ、彼らの生活の糧となることは言うまでもない。恐るべきことに、冥宮に出入りする者どもの命すら、この冥宮生態系サイクルに含まれているのだ。